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自分が怖くないことをわかってもらうためか、シリアは俺に何か色々言っていたが、よく分からなくて後ずさる。
どうしてこの人達は俺に構ってくるのだろう。
自分がいかに異常なのか、その頃の俺は全くわからなかった。
「どういう事なんだ?」
「物心ついた時には、恐らく地下の部屋にいて。誰とも会わず、外にも出ず、で過ごしてたみたいだよ」
「はぁ?親は」
「記憶にないみたい」
「それがどうしてこんなところに?」
「家が全焼……したみたいだね。それで、……ちょっと待って。こいつ闇属性だ」
「は!?」
2人で何かを話していたと思ったら、シリアが突然俺から距離をとった。
何故自分から離れたのかはわからなかったが、体温が離れたことに安堵の息を吐いた。
しかし、その表情を見て息を呑む。
警戒と、少しの恐怖。
その表情が、俺に良い感情を抱いていない事がわかってしまった。
本能か、直感か。
逃げなければならないと感じた俺は、震える足で木々の生い茂る場所へと走った。
「バカじゃないの。そんな表情したら逃げるに決まってるでしょ」
「だが、暴走したらどうする」
「暴走のキッカケは"そういう感情"だって事、そろそろ学んだら?」
シリアをその場において、アルベルトが俺を追いかけてきた。
非力な俺はすぐに追いつかれたが、アルベルトは無遠慮に俺に触ることはなかった。
警戒も、恐怖もない表情で、一定の距離を保ちながらこちらをただ見ている。
そんな彼を不思議に思い、俺は大木に半身を隠した状態でアルベルトを覗き見る。
「あ、止まった。しっかし、追いかけてみたものの、こっちの話が全く通じないしな。面倒だな」
1人で何か呟いていたが、やがて名案を思いついたように自身の持ち物を探り始めた。
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