第13走

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とうとう俺の頭に拳骨が落ちた訳だが。 声には一切出していないのに。 どこか解せない気持ちを持ちながら、本を読むのを再開する。 言い方は悪いが、シリアの話す事に興味がなかった。 今は手元の魔法陣解読本の方が気になる。 「……へぇ、ギルドマスター補佐になったの。おめでとう」 「……お前なぁ……心を読むのはやめろ」 なかなか話を切り出さないシリアに、アルベルトは容赦なく心を覗き見たらしい。 デリカシーの欠片もない。……最近覚えた言葉である。 この言葉はアルベルトにピッタリだと思った。 「ふーん、ユオをギルド員にねぇ……いいんじゃない?」 実戦経験を積むのも大事だしね、とこちらに視線を向けるアルベルト。 その視線には「お前さっきから僕に失礼な事ばっか考えてない?」という意味も含まれてそうだが知らぬふりをする。 何はともあれ、自分がギルド員として働く事には興味があった。 今は完全にアルベルトにお世話になっている訳だが、いつかは出ていかなくちゃいけないし、自分で生活できるくらいにはなりたい。 それに、アルベルトが言ったように実戦経験を積めるのはとてもありがたい。 いつかは師を追い越したい、というのは弟子の思うところだと思う。 未だ一発も入れられていないため、道のりは遠い気がするが。 「詳しく聞かせろ」 「……お前本当に……育て親間違えたんじゃないか?」 「どういう意味かな」 深いため息を吐くシリアにギルドの説明を受け、俺が正式なギルド員となったのはすぐだった。 討伐以外にも色んな依頼はあったが、強くなるのも目的の一つだったので、討伐依頼以外は受けなかった。 稀に、身体を鍛えられそうな依頼があれば気まぐれに受けていたが。 達成率は100%だった。 なるべく魔法は使わないようにしていたが、いざとなれば魔法でゴリ押しすれば大抵勝てるし。 その度にアルベルトには呆れ顔で見られていたが。
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