第13走

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そんなある日。 「じゃ、よろしくな。ユオ」 「よ、よろしくお願いします」 「……はぁ」 新人の教育係というとても面倒なものを押し付けられてしまった。 俺がギルド員になってから7年の月日が経っていた。 そりゃ流石に依頼にも慣れてきたとはいえ、まだ10代前半のガキに任せる仕事ではないと思うのだが。 「零番隊に手が空いてる奴がいなくてなぁ……悪いが頼む」 と、2年前にギルドマスターになったシリアに言われては断れない。 ちなみに、零番隊というのはランク0保持者の事を指し、ランクの中では最高ランクだ。 何故俺がそんな事になっているのかといえば、まぁそういう事である。 依頼達成率100%で7年間過ごしていれば目をつけられるのも当然といえば当然か。 俺としてはそっとしておいてほしかったが。 前ギルドマスターからシリアに代わる直前にランクを上げられたのである。 この歳で(正確な年齢は知らないが)ランク1にいる事で既に目立っていたのに、ランク0になった事が周りに知られたら面倒な事この上ない。 なのでこちらとしては必死に隠しているのである。 今もフード付きの上着を羽織り、暑苦しい仮面を付けているわけだが。 前髪も伸びてきたし、仮面はやめようかなと思案中である。 戦闘時に邪魔だし。 「あ、あの、自分は何をすれば良いのでしょうか??」 新人……つい先日零番隊に上がってきた、ヨハン・アリージャが戸惑った様子で俺に話しかけてくる。 絶対俺より歳上なんだから、もう少し堂々としててもいいものだが。 そう思ったすぐ後に、そういえば相手から俺の顔は見えてないのかと思い直した。 しかし、何をすればいいと俺に聞かれても。 新人の面倒なんか一度もみた事がない俺は少し迷った。 とりあえず、普段自分がしている事を教え、一緒にやってみる。 これでいいのかは正直わからなかったが、教育係が俺に当たってしまって運が悪かったと思って諦めてほしい。
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