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……どうやら俺には誰かの面倒をみるという事は難しいらしい。
「お前、自分が普段やっている仕事を片っ端からやらせたんだって?初日から自信なくしてたぞ」
「……あぁ」
零になってから3年目の俺と零になったばかりの奴が同じ事を出来るわけないだろ、と苦笑された。
と言われても、何をどうしたらいいかなんてわからないしな。
無表情の中からそんな困惑を見つけたのか、シリアはさらに苦笑する。
シリアは心が読めなくても他人の心情を察するのがとても上手いと思う。
俺の表情の変化なんて、わかる奴は今のとこシリアくらいだ。
アルベルトはズルしてるから除外する。
「お前が零に入ってきた時と同じように、今度はお前が教えてやればいいんだよ」
「……覚えてねーな」
「お前なぁ……」
正直に言っただけなのに、今度はシリアを困らせてしまったようだ。
しばらく考えた後、俺は軽く手を叩く。
「わかった。ちょっと時間くれ」
「え、わかったって何が……おい、どこ行くんだ?」
おーい、誰が新人の面倒みるんだー、と遠くから聞こえた気がするが無視させてもらう。
今の自分に足りないものがあるなら、学んで補えばいいだけである。
口で言うほど簡単ではないが、まぁなんとかなるだろう。
「兄ちゃんだれー?」
「かみ黒いの、へんなのー」
「ギルドの方ですね、おまちしてました」
と、いうわけでやってきたのは教会だった。
まずは小さい子供から攻略できれば、徐々に分かってくるはずである。
今思えばツッコミどころ満載である。
「よろしく」
「おべんきょう教えてくれるの?」
「あぁ」
ワァッ、と盛り上がる子供たちを前に、俺は授業を始めたのだった。
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