第13走

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しばらく見ていて、シアンと自分の違いがとてもよくわかった。 俺の持っている本の内容をそのまま伝えようとしても、子供たちには伝わらない。 もっと噛み砕いて、わかりやすく。例えを出したりして理解しやすく。 相手の目の高さにこちらが合わせて話すような。 ……俺は何でも自分基準で、相手の事をまったく考えていなかった。 相手の事をよく見て、相手の事を考えて話す事が大事なのだとわかった。 「シアン」 「はい?」 「明日も来る」 「え?ちょっ、ギルドへの依頼は1日……」 「……今日は俺が勉強させられた。再挑戦させろ」 というか、俺が満足できるまで通う気でいる。 もともとこの依頼を受けたのは俺が人との接し方を学ぶためのようなものだったし、しばらく通いつめる気でいた事は伏せておく。 家に帰り、お気に入りの椅子に座りながら考える。 相手の事を考える、というのは存外難しい事である。 教えるのが年齢性別バラバラの子供たちなら尚更。 その日は夜遅くまで思考にどっぷり浸かり、寝たのは朝日が顔を出してからだった。 「んじゃ、まず魔法と魔術の違いから教えようと思いマース」 「にいちゃん、また来たのかよ」 「いらいりょーだってタダじゃねーんだぞ」 「金とってねーわ安心しろ」 早速子供たちからヤジが飛ぶが、そんなのは大した事ではない。 ドラゴンに単身突っ込んだ時の方がよほど大した事だった。 ……どこからか「そういう事じゃない」と聞こえた気がするが、兎にも角にも構わず授業を始める。 まず、魔力板に属性をすべて書き出していく。 書き出したのは「火、水、風、土、雷、光、闇」 そしてそれぞれの属性の横に2本の線を書く。
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