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食堂に行けば、扉を開けた瞬間に一瞬静まる生徒達。
これもいつもの事なので、江湖は気にした様子もなく食券を買う。
「ちょっとぉー、まてってエッコりーん!!俺も今買うから!!食券!!あと10秒待って!!」
「横入りはやめなさい。蹴り飛ばすわよ」
喧しく食堂に入ってくる花枝を避けるように、食券販売機の前にいた生徒たちは横にはける。
それを無視して食券を買おうとする花枝に、江湖は片足を上げる。
「えー、横入りっつったってー、誰もいねーじゃん」
「ほら、あなた並んでたでしょ。ササッと買っちゃいなさいな」
「エコりんやっさしー!!その優しさ俺にもわけてー!!」
江湖が促すと、おずおずと買いはじめる生徒たち。
それを見た花枝がまた騒ぎ出すが、江湖は気にせず食券を渡しに行った。
「よぉ、騒がしいと思ったらまーたお前らか」
「あら、こんにちわキリちゃん」
食券を渡して料理が出てくるのを待っている江湖の頭に、誰かの腕が乗る。
少し前のめりになりながらも横に目を向ければ、ニヤニヤと楽しそうに笑う黒髪の男がいた。
この男の名前は、小野間 霧矢―オノマ キリヤ―。
この学校の風紀委員長のくせに、粛清とか言って風紀を乱した奴を病院送りにするなど、結構問題児だ。
「今日は何食うんだ?」
「何でもいいじゃない。鮭定食よ」
「なんだかんだで教えてくれるお前が好きだぜ」
「冗談はそのだらしないニヤけ顔だけにしてちょうだい」
「あー!!てんめぇエコりんにちょっかいかけてんじゃねーし!!」
貶したのに、ニヤニヤ顔を崩すことなく江湖の肩に手をまわす小野間に、江湖はその手を叩きながらため息を吐く。
そこに、ようやく食券を買った花枝が加わり、また喧しく喚きだした。
「相変わらずお前はうるせぇなぁはなちゃん」
「ぶっちょろーっす!!」
「ここで暴れるのはおやめなさいな」
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