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江湖以外にちゃんづけで呼ばれるのをひどく嫌う花枝が小野間に殴りかかる、前に江湖が花枝に回し蹴りをくらわして黙らせる。
それにヒュウ、と茶化すように口笛を吹く小野間をスルーして、江湖は食堂のおばちゃんから鮭定食を受け取る。
その後、江湖の座った席に小野間と花枝が一緒に座り、騒がしい昼食を終えた。
そして放課後、駅まで一緒の花枝と別れ、江湖は1人で電車に乗り込む。
イヤホンをつけて窓の外の景色を眺めながら電車に揺られ、自宅の最寄り駅で降りた。
家までの道を真っ直ぐに歩いていると、突然目の前に黒いウサギが現れて、江湖は思わず足を止める。
「いやいや、え?こんなところにウサギ……?」
イヤホンを外し、周りを見渡してみるが、このウサギの飼い主らしき人は見当たらない。
まさか、山から下りてきたのだろうか。
っていうか、近くの山にウサギなんていたのね、と思いながら、江湖はどうしたものかと首を傾げる。
野生のウサギなら、江湖がこのまま歩き出せば驚いて逃げるだろう。
でも、もし飼い主から逃げ出してしまったウサギなら?
保護して警察にでも届けた方がいいのだろうか。
ここら辺はあまり車が通らない道だからいいが、もしこのままこのウサギが大通りにでも出てしまったら。
車やバイクに轢かれてしまうかもしれない。
と、江湖がしばらく考えていると、そのウサギと目が合った。
ウサギはしばらくジッと江湖を見つめていたかと思うと、急に振り返って走り出す。
「あ、ちょっと、待って……!!」
やっぱり保護した方がいいかもしれない、と江湖はウサギを追いかけた。
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