第1走

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……おかしい。 ウサギをひたすら追いかけていた江湖は、ようやく周りの異変に気づいた。 自分の家の近くを走っていたはずの江湖は、いつの間にか知らない道を走っていた。 地面はコンクリート、だが、周りは木々で覆われている、並木道。 ウサギは今も江湖の数メートル先を走っている。 「ねぇ、ちょっと……待ちなさいよ……!!」 息もきれてきた江湖がそう言うと、その声に反応したのか、こちらを振り向くウサギ。 そしてようやく江湖がウサギに追いつくと、ウサギはまるで道案内でもするかのようにまた走り出す。 「あ!!……もう!!」 こうなりゃ意地だ、とウサギを追いかけるのを再開する江湖。 すると、並木道の先に光が見える。 その光に向かって走る江湖は、ふと立ち止まって後ろを振り返ろうとする。 『ダメだよ』 が、脳内に直接響いてきたような澄んだ声に、江湖は再び前を向いた。 ……今のは、なんだったのか。 訳がわからないながらも、なんだか振り返ったらいけない気がして江湖は振り返らずに光へと走った。 並木道が終わり、ひらけた空間にでる。 山の頂上だろうか、坂の上に大きな木がそびえ立っている。 追いかけていたウサギの姿は見当たらなかった。 「ちょっと……、どこよ、ここ」 色とりどりの葉っぱが生えた、見た事も聞いた事もない大きな木が立っている空間はまるでこの世のものとは思えない不思議な雰囲気を纏っていた。 と、ひょこり、と地面に敷き詰められている葉っぱの中から黒いウサギの耳が見えて、江湖はそれを追いかける。 そのウサギは大きな木の反対側の根元に行くと、そこにいた男の膝に乗っかる。
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