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side 頼
「先生、後俺はどれくらいですか?」
そう医者に問うと医者は目を丸くした。
自分の体のことは自分が一番知っている。
だからこその、質問だった。
「そんなことは気にせず、君は今の治療を続けない。必ず治るから」
穏やかに微笑み、落ち着き払った声音。
だが、その声が余計に不安を駆り立てた。
──先生、俺、もう長くないでしょ。
────
アキラと別れてすぐ、俺は入院した。
日に日に痩せていく体。吐く物もないのに、毎日毎日飽きもせず戻してしまう。
辛くて、何度も死にたいと思った。
いや、死んでももういいって思ってる。
だって、俺はもう思い残すことも何もないから。
心残りなのは、残してきた母親と妹。
俺がいなくなったら、涙を流して、悲しみでいっぱいになりそうだな。
こうなる前に、もっと、家に帰っておけばよかった。なんて、…今更遅いのにそればかり考えてしまう。
気丈な母親と、口の悪い妹。
ごめんな……兄ちゃんもうダメみたいだ。
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