傷つきドール

10/18
前へ
/51ページ
次へ
「…、お兄ちゃん…っ」 ガラリと個室の部屋が久しぶりに音を立てたかとおもうと、懐かしい顔ぶれ。 「……、久しぶり」 弱々しくなった俺を見て、酷く顔が揺れた妹。 泣くかな。なんて思ったら、泣きそうな顔して一生懸命はにかんでた。 「久しぶり、お兄ちゃん。元気そうでよかった」 嘘をつくときはいつも首もとを触る癖は、いつまで経っても変わらないんだな 「…、頼。アンタなんてとこにいんのよ」 「……母さん、」 たぶん、もう医者から俺のことは聞いているんだろうか。目元が真っ赤で、凄く罪悪感に苛まれた。 「ほら、さっさとそんな病気治しちゃって家に帰るわよ。あんたの好きなもんたくさん作って待っとくから」 「………うん」 ありがとう。母さん。 女手一つで俺を、俺たちを育ててくれて。 いつも、笑顔で出迎えて、『おかえり。』といってくれた母さん。 俺、母さんにまだ、何も返してない…っ
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

212人が本棚に入れています
本棚に追加