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「……ほんっと、お兄ちゃんは世話が焼けるんだからっ!」
普通に接してくれようと、頑張る妹に、心が救われる。
神様。俺は十分すぎるくらい、幸せだ。
この病を憎んだこともあった。悔しくては、何で俺が、俺だけが。そんな風に卑屈になったときもあった。
そんな俺が、こうやって笑えていられるのは、
思い残すことがないくらい、幸せなのは、
俺にはもったいないぐらいの愛をくれる家族とアキラがいてくれたからだ。
俺は消えてしまうけど、最後にもし願いが叶うのなら、どうかこの優しい人たちを守ってください。
悲しみで溺れないように、見守っていてください。
もし、この人たちに何かあったら、俺は神様だろうが許さない
***
「はい、ちゃんと食べてね~」
妹が不器用ながらに剥いてくれたりんごを手に取ると、手に力が入らずに滑り落ちてしまった。
「あ、…。」
「…っ、んっとに、昔からお兄ちゃんは世話が焼けるんだから………」
妹がまた憎まれ口を叩きながらケタケタと笑い、俺が落としたりんごを拾おうと腰を落とす。
俺は、妹の手が震えていることに気づかないふりをして、笑い声を立てた
「…ちょっと、トイレいってくるね」
耐えられない。そんな感じだった。
今にも泣きそうな癖に、それでも俺の前だけでは泣いたらいけない。なんて思っているんだろう。
全く、変なところで気遣うんだから、バカな妹。
………俺が見えないところで泣いてることが、一番辛いのにな。
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