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「まあでも、彼女の生霊は優しかったわよね」
黒川さんがふっと呟きました。
自分の彼氏を殺そうとしたのに優しいとはどういうことだろうと思い、僕は言葉の意味を尋ねました。
「だってわざわざ殺そうとする前に彼女は警告してくれてたでしょう」
あっと思いました。
確かにそうです、本気で殺すつもりなら警告なんてしないでいいのです。
さらに続けて彼女はこんなことも独り言のように言いました。
「強い生霊とは言ってもまだ人の形をしていたしね」
まだ人の形をしていた……生霊なのだから、当然その飛ばしている人の姿をしているものと思ったので、僕はさきほどと同じように問いかけました。
「人の形をしていない生霊もいるんですか?」
僕のその問いに対し、いるよと黒川さんは答えました。
そして、そっちの方がシャレにならないことが多いよとも付け加えました。
僕は黒川さんに人の形をしていない生霊も見たことあるんですかと聞いてみました。
すると彼女は何の感情もない表情で口を開きました。
「昔しつこく言い寄ってきた男になあ」
ただそれだけ呟いて、それ以外は何も教えてくれませんでした。
後で考えたのですが、それはその言い寄ってきた男から飛ばされた生霊だったのか?
それとも彼女の方が……。
今となっては確かめたくもありません。
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