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しかし…彼女は逃げたのだ。
下弦の月の薄き光が庭園を行く彼女を照らす。
…フラフラになり、髪はボサボサ、肩に辛うじて引っかかる長襦袢。蛇行する足元…
もう少しで裏門に通じる小道…
『Don’t let her get away!』
その一言で…彼女は野ばらのベッドに投げ出される。
公になっては困るのだ…
放たれた弾に流れた血…野ばらは
浴びて…吸い…そして育つ…
彼女の行くえは、解らず…
ただ優しさだけが取り柄だと…言われた夫ゆえ、飽きて…何処ぞの男と駈け落ちをしたのでは…と噂だけが流れた…
野ばらの呪いは…その想いなのか…祖母が15の歳に現れた。
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