第1章

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しかし…彼女は逃げたのだ。 下弦の月の薄き光が庭園を行く彼女を照らす。 …フラフラになり、髪はボサボサ、肩に辛うじて引っかかる長襦袢。蛇行する足元… もう少しで裏門に通じる小道… 『Don’t let her get away!』 その一言で…彼女は野ばらのベッドに投げ出される。 公になっては困るのだ… 放たれた弾に流れた血…野ばらは 浴びて…吸い…そして育つ… 彼女の行くえは、解らず… ただ優しさだけが取り柄だと…言われた夫ゆえ、飽きて…何処ぞの男と駈け落ちをしたのでは…と噂だけが流れた… 野ばらの呪いは…その想いなのか…祖母が15の歳に現れた。
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