第1章

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茫然自失… 何が起こっているのか解らず、ただ消えゆくを見… 叫んだは… 『ロクちゃん!!!』 と… 夕陽の丘の木の下で…彼は消えたのだ。18の歳。 ”鈴…” と僅かに名前を呼んだまま… 未だ咲きもしない花。 ”乱暴ものの鬼ロクは、何処ぞの組へでも入ったか…消えおった…” そう村の噂になって流れた。 焦り戻りて父に言うも…笑って取り合わず… ただ真実は、硬い黒い石の様に 心の奥底に。 村人の噂も消えし頃… 鈴もあの鬼ロクと同じ歳になった。 折しも、大工として働く父の仕事先…建築中の豪邸。その家の遊び人の三男坊が、休みにも働く父の為…弁当を持ちて寄りし鈴を見染めて懸想する… そう…建物裏の影にて、通せん棒宜しく抱きしめた… その時に…その全てを悟った… 鈴、その身の怖さ。
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