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「やってしまった…」
男は絶望していた。
いままで特に目立った経歴もなく、平均的な大学を卒業しそれなりの会社に就職。
結婚も経験し、いまでは子供が1人と幸せな生活を送っていたある日、突然人を1人轢いてしまったのだ。
しかも、原因は居眠り運転とくれば尚の事であろう。
もし轢かれた側が死んでしまったら…
車は時速50キロ程で走行していたので十分死んでしまったことも考えられる。
「いっそのこと逃げてしまおうか…」
幸いここは人通りの少ない道だ。
時刻は夜の7時をすぎており季節が冬ということもあって目撃者はいない。
そんなよからぬ事も考えたが男は逃げ切れるとは到底思えなかった。
まずは轢かれた側の確認をと、やっとの思いで車のドアを開けた男は恐る恐る前方を覗きみる。
するとどうだろう、ボンネットの多少のへこみがあるにも関わらず吹き飛ばされたと思われる人が何処にもいないのだ。
「あれ…?あれぇ??」
まさか夢をみたわけでもあるまいと思った男はしばらくただ呆然とその場に立ち尽くすのであった。
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