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 青い畳の上で身体(からだ)をひねったところに、タンブリングで回転してくる相場(あいば)の両足が落ちてきた。タツオは左太腿(ふともも)に衝撃を感じた。なんとか胴体は守ったようだが、逃げ遅れた腿を踏まれたらしい。  タツオはまだ腹ばいになったままの格好で、太腿の状態を確かめた。ようやく思いだす。相場は床運動のスペシャリストで、国体では3位以内に入賞している。どのような競技であれ、その道の達人なら戦闘能力が高度であるのは当然だった。格闘技経験がないからと、なめていたタツオの戦略ミスだったのだ。  タンブリングはすぐには止められないのだろう。何度か前転を繰り返して、試合場の向こうで相場が停止した。タツオはなんとか立ちあがろうとしたところだった。左足がしびれて、まっすぐに立てなかった。 「いくぞ、逆島(さかしま)断雄(たつお)。つぎは高紀(たかのり)の分だ」
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