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 2回戦は休むことなく開始された。  第1試合は左のブロックの端にいる東園寺(とうえんじ)崋山(かざん)だった。カザンはこの試合でも秘伝「呑龍(どんりゅう)」の出し惜しみはしなかった。試合始めの審判の声が飛ぶと同時に、相手を抵抗不能にする拍子(ひょうし)をとり始め、レスリングの関東代表・中乃(なかの)智光(ともみつ)を1分足らずで葬った。  身体機能を停止させた敵に加えられる一方的な攻撃に対し、大観客席も静まり返ってしまう。どうにも陰惨な雰囲気が漂(ただよ)うのだ。最初から対等の闘いではなく、彫像のように静止した敵への加虐という印象を免(まぬが)れない。東園寺派と五王(ごおう)派の生徒たちが熱のない野蛮な応援を繰り返すだけだ。 「なんだか勝負の行方が見えてきたみたいだな」  本選には不出場のクニが興奮していった。
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