鏡花水月

2/4
前へ
/40ページ
次へ
………… どこまでも赤くて、熱い。 「…ごめんね、」 守ることができなかったよ もう、目の前にいないあの子に向かって呟く。 花の模様の散った手鞠を、自分の手で回しながら、 目の前で燃え盛る炎から逃れるように目を閉じる まぶたの裏側は変わらず熱かった。 あぁまただ。 炎を見るとあの時を思い出す なのになんで私は、こんな武器で戦うのか 投げると、すべてを焼き尽くしてしまうような手鞠で。 「…自責の念でもあるの?」 そうやって自嘲する あぁ、本当にくだらない こんな、自分がくだらないよ 座敷童子は、憑いた家に幸福をもたらす精霊。 なのに、 「あたいは誰も幸せにできない」 最後にもう一度嘲笑う。 「じゃあね」 もう一度手鞠を投げる 激しい閃光が一瞬目を眩ませて…… 後に残ったのは、焼けた野原だけ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加