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西山田は、沙和子の細い首を押さえ付けながら、ぶつぶつと言葉を続けた。
「…まさか、3人でしてるとか?…やだなあ、そんなさわちゃん、やだなあ…」
西山田の血走った瞳に見つめられながら、沙和子は浅く息をしている。
首を押さえ付けられているせいで、そうしなくては、空気を取り込めなかった。
「は…なし…て…」
沙和子が息も絶え絶えにそう言うと、西山田は何故か驚いたように、沙和子を見た。
「ああっ、ごめんよ、さわちゃん。…つい興奮しちゃって…俺のダメなところだ。つい夢中になっちゃうんだ。ごめんね、苦しかったよね…」
そう言うと、西山田はあっさりと手を離した。
沙和子はその場に崩れ落ち、咳込んだ。
声は出なかった。
沙和子はそのまま、地面を這うようにして、通りの灯りの方へ手を伸ばした。
だが、後ろから髪を引っ張られ、今度は座ったまま、コンクリートの壁に身体を押し付けられた。
「なんで逃げるの、行かないでよ」
そう言いながら沙和子の肩を掴む西山田の視線が、ふと下に向いた。
沙和子の着ているワンピースの裾は、座り込んだ拍子にめくれ上がり、白い太ももが半分ほど見えていた。
西山田は沙和子の口を押さえ付けているのとは、反対の手を、そろりと太ももに伸ばした。
妙に湿った指先が、沙和子の肌に触れる。
その瞬間、沙和子は声にならない声をあげて、両脚をバタバタと力一杯動かした。
動かした、というよりも、草むらで不意に身体に虫がとまった時のような、嫌悪感からそれをはらおうとするような、そんな無意識の動きだった。
西山田は一瞬怯んだが、沙和子の両脚を自分の脚に挟むようにしてのしかかると、薄く笑った。
「…綺麗だよねえ、足。ずっと思ってたんだよ?見てたの知ってるでしょ?…さわちゃん、いつも挨拶してくれたもんねえ」
西山田の手が、沙和子の腿の上を這い回る。
沙和子は必死に喉を鳴らして、首を振る。
次から次へ、涙がこぼれた。
もしかしたら、殺されるかもしれない。
そう思うと手が震えて、西山田に向かってその手を振り上げるなど、できそうになかった。
ああ、手の感触が、いやだ。
そう思いながら目を閉じると、
哲司の顔が浮かんだ。
最後に見た、辛そうな顔だった。
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