1143人が本棚に入れています
本棚に追加
「ラ・ターシュ?馬鹿め、俺が開けたのはロマネ・コンティだけだ!」
まさに吹き抜ける嵐の如く。
手を振って部屋を出て行く変人に
征司が声を荒げる。
「いいや。どうやら彼が正しいよ」
「なに?」
目を丸くして
ワインボトルを掲げたのは九条さんだった。
「疲れてるんじゃない?ラ・ターシュ。一本混ざってた」
ラベルを確かめ肩をすくめる。
「わお、やっぱり見た目通り――あの人ただものじゃない」
僕なんか言われていくら飲み比べても
味も香りも似たようなもんだ。
「一本取られたな」
美しい巻毛をかき上げながら
薫が珍しく押され気味の王様を鼻で笑う。
最初のコメントを投稿しよう!