episode 146  もう一人の妾の子

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「ラ・ターシュ?馬鹿め、俺が開けたのはロマネ・コンティだけだ!」 まさに吹き抜ける嵐の如く。 手を振って部屋を出て行く変人に 征司が声を荒げる。 「いいや。どうやら彼が正しいよ」 「なに?」 目を丸くして ワインボトルを掲げたのは九条さんだった。 「疲れてるんじゃない?ラ・ターシュ。一本混ざってた」 ラベルを確かめ肩をすくめる。 「わお、やっぱり見た目通り――あの人ただものじゃない」 僕なんか言われていくら飲み比べても 味も香りも似たようなもんだ。 「一本取られたな」 美しい巻毛をかき上げながら 薫が珍しく押され気味の王様を鼻で笑う。
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