episode 126 常夏の夜の迷夢

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「スタンダールは言った。恋愛には四つの種類がある。情熱の恋、趣味の恋、肉体の恋、虚栄の恋――だとしたらこれは間違いなく、肉体の恋だということさ」 スタンダール? インテリぶって聞いて呆れる。 「ねえ、どうして?どうして止めないのっ……?」 乱暴に抱きすくめられた肩越しに 僕は愛しい人を見つめる。 その瞳は どこか不安げで どことなく投げやりで。 あの日――。 海に投げ出された時からずっと。 征司はいつ爆発してもおかしくない 不安定な時限爆弾を抱えている。 征司――なんでだよ。 僕らは2人きり やっと自由になれるはずだったのに。
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