Ⅳ それぞれの想い

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「荒木が……いや、俺の父が 乗っていないはずの乗客を見たと言ったときに、 ぞっとしました」 「……」 「父は、母と妹を乗せて夜行バスを出発させて行きました。 その日は多分、いつも以上に上機嫌だったのだと思います」 「……」   乙黒も霧島も黙って高峰の言葉に耳を傾けた。 「高速道路を逆走してきた馬鹿な車両に正面衝突し、 横転炎上したバスの運転手とは父のことです」 「……そして唯一亡くなった乗客2人ってのは」 「……俺の母と妹、つまり荒木の妻と娘です」 乙黒も霧島も視線を床へ落とした。
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