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「荒木が……いや、俺の父が
乗っていないはずの乗客を見たと言ったときに、
ぞっとしました」
「……」
「父は、母と妹を乗せて夜行バスを出発させて行きました。
その日は多分、いつも以上に上機嫌だったのだと思います」
「……」
乙黒も霧島も黙って高峰の言葉に耳を傾けた。
「高速道路を逆走してきた馬鹿な車両に正面衝突し、
横転炎上したバスの運転手とは父のことです」
「……そして唯一亡くなった乗客2人ってのは」
「……俺の母と妹、つまり荒木の妻と娘です」
乙黒も霧島も視線を床へ落とした。
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