Ⅳ それぞれの想い

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「もしかしたらその最期を見てしまったのかもしれない。 父はそれ以来別人になってしまいました。 母のことも、妹のことも、 ……俺のことも全てを忘れてしまいました」 「だから荒木さんがいないはずの乗客を見たときに怖かったのか」   乙黒は静かに尋ねた。 「父が思い出したくない過去の蓋を開けてしまうのではないかと、怖かったのです」 「……それでいいんですか?」 霧島も静かに尋ねた。 「わかりません。 家族のことを思い出させ、父に後悔と悲しみを与えるべきなのか。 それとも今のまま何事もなかったかのように孤独な人生を歩ませるべきなのか……」   高峰の目から一滴の雫が流れ落ちた。 「俺には、わかりません」
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