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『3番目にやって来たのは母と娘の2人組親子だった。
二人とも黒い衣服を身にまとい、沈んだ面持ちでやって来た。
私に会釈をして、大した荷物も持たずに中へと入っていった。
何か事情がありそうではある。興味を引かれる』
このヴィジョンを見たときに、
荒木の生霊を取り込んでいた乙黒はすぐに感じ取った。
この親子は荒木の妻と妹である、と。
そして、先程まで話していたあの高峰という男からも感じ取った。
家族という無意識下の繋がりから発せられる独特な雰囲気を。
ふらふらとした足取りで、乙黒はバス会社の外へとやって来た。
「乙黒さん、報酬は?」
「ばっきゃろー。
アタシたちは何もしてねーだろが。
変に家族間を引っ掻き回しただけだ。
迷惑かけただけだよ。
報酬なんて貰えるか」
「……そうですね」
「まあ荒木さんは今後も運転手として生きていくだろうけどよ。
記憶を、元の人格を取り戻せるかは、わかんねーよ」
乙黒は振り返って会社を見上げた。
「それはアタシたちが背負うことじゃないからな」
「……はい」
霧島も乙黒の視線を追った。
そのあとに思ったことがあったのか、ふと乙黒を見つめた。
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