Ⅰ 乗客消失事件

4/8
前へ
/40ページ
次へ
  4番目にやって来たのは、 失礼だがホームレスなのではないかというほど、ひもじい格好をした男性。 最初、不審感を抱いた私だったが、 その男性は「今日は冷えますなあ」と人懐っこい笑みを浮かべ、バスの中へと入っていった。 今夜の客の中で一番親しみを覚えた。 人は見かけによらないというのは本当らしい。   5番目にやって来たのは、 この肌寒い時期だというのに白いYシャツ一枚にコートはおっただけの細身の若い男性。 一言「よろしくお願いします」と挨拶だけ交わして中へと入っていった。 この男性が特徴的だったのは、なんと髪の毛が真っ白だったのだ。 白髪というのとは違う気がする。 染めている……いや、色を抜いているような綺麗で透明な白さだった。 近頃の若者のおしゃれというのはわからない。 しかし、礼儀正しいだけ有難いものである。   6番目の客だが……。 会社から連絡が入った。 乗客からキャンセルが入ったらしい。   ふむ。 つまりはこれで全員揃ったということだ。   時刻は22時丁度。   私はいつも通り、この相棒とともに目的地へ向け出発する。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加