.:*:。 夏座敷 ・゚:*:・'°☆

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「あんな優しい言葉どころか、あんな優しげな声も聞いたことがない。いったい茶々丸なんかのどこが良いんだ」 ギリギリと奥歯を噛み締め口を歪ませ、歯を剥き出しにする。 「金もねえし、背も体もちっせえ、見目も平凡…いや、中の下の下の下だ。なぁんも良いとこねえ男だぞ」 さらに一歩一歩家へと近づいていったんだ。 今宵は月夜のせいか、辺りがよく見えたんだなあ。 それが災いしちまったのか、たまたま手頃な棒っきれが目に入ったんだ。 悪い考えが頭に浮かんでなあ… 「茶々丸のヤツをボッコボコにしちまえば、七星は言うこと聞くんでねえか?くくく…幸いここは隣へも遠い…くくく…」 目には淫靡な色が見てとれ、錦之丞は舌舐めずりをしながら、家に近づくごとに逸る気持ちを抑え、足音を殺し歩みを確認しながら進んだんだ。 やがて離れた場所でいた二人は、近くに寄っているのか声が小さくなったから、錦之丞は物陰に隠れ様子を窺ってたんだな。 部屋の明かりが消えたと思ったら、小さな行灯の火が灯っているらしく、微かに灯りを感じる程度だ。 何度か言葉を交わしているらしく、途切れ途切れに声が聞こえる。 錦之丞は握った棒を握り直し、縁側へと回ったんだ。 今宵は月夜の晩だ。 部屋ん中でも小さな灯りがついてるわなあ。 そこで錦之丞が見たもんは… 暑さのために襖や障子が取り払われ、奥の寝所の蚊帳の中の二人が丸見えになり、妖艶なまでに美しい、一糸纏わぬ七星の生身の姿だったんだな。 ドクリと心の臓が飛び跳ねる。 細身の体は、肉付きがよくないように見えるが、錦之丞は特にこだわりのない男の為、 気にするどころか婬魔に取り憑かれたような目で唇を舐め、自然と己の手で股間をまさぐりながら、知らず知らずのうちに縁側から中へ… 中の二人は気づくことなく夢中でまぐわっている。 「んあはぁっ…」 七星が果てて吐き出しうっすら目を開くと、足を開いたすぐ前の蚊帳の外で、早くに果て出すモノを出したまま一点を凝視している錦之丞がいた。
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