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3
(私は速水伸二が嫌いだ)
入学式が終わり、姉である優姫桜を迎えに行く紅葉。お姉ちゃんは早速男子に囲まれてメールアドレスを聞かれ困った顔をしていた。
「お姉ちゃんから離れろ!」
「え……?」
背後から飛び蹴りをくらい、男子達は桜から離れた。悪い虫は私が寄せ付けない。紅葉の決意は固かった。特に速水伸二だけは絶対に近付けない。それは既に決定事項だ。
桜は紅葉と一緒に廊下を歩きながらクラスでの事を話した。
「クラスは楽しい?友達は出来た?」
桜の第一声はそれだった。昔から人付き合いが苦手で、孤立してしまうことの多い紅葉を桜は心配しているのだ。
紅葉は人差し指を顎につけて考える。今日はまだ人と会話した記憶がない。紅葉は誤魔化し笑いをして答える。
「う~ん……まだ初日だし皆んなぎこちないから友達っていう感じの人はいないかな?」
「そっか……」
少し残念そうな顔をする桜。だがすぐに明るい顔をして笑った。
「でも紅葉ちゃんは伸二君と同じクラスでしょ?なら伸二君と」
「ヤだ……あいつ嫌い」
「え~でも伸二君は良い人だよ?優しいし、面白いし。昔と全然変わってなかったな~」
「昔よりキモくなってた。前髪も長くて殆ど顔見えなかったし」
「そうかな?でも……私も伸二君と同じクラスが良かったな~」
そう言う桜の顔が少しだけ赤く見えた。紅葉が唯一嫌いなお姉ちゃんの顔。紅葉は俯きながら問いかける。
「お姉ちゃんは……今も伸二のこと好きなの?」
「へ……?」
突然の質問に頭から煙を出す勢いで顔を真っ赤にする桜。
「ど、どどどどうしてそうなるの!?し、ししししんじ君は好きとかそう言うのじゃなくてね?ほら、アレなの……アレ!!アレなんだから!」
「分かった分かったから、ね?落ち着いて」
「うぅ……」
動揺しまくる桜。バレバレだ。そんなお姉ちゃんが可愛いなと思う反面、やはり伸二を認めたくない自分がいる。
お姉ちゃんは私のお姉ちゃんだ……誰にも渡したくない。
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