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「お、おはよう……」
「……」
高校生活二日目。朝学校へ来てまず紅葉に挨拶をしてみるというなんともチャレンジ精神旺盛なことをした結果、華麗に無視されてしまった。
やはり紅葉は俺と仲良くする事を望んではいないらしい。
諦めて席に着くと一部始終を見ていた水谷が肩を叩いて慰めてくる。
「大丈夫だ。きっといつか認めてくれる日が来る!それがラブコメと言うもんだ」
「俺の日常を勝手にラブコメにしないでくれ」
横目で紅葉の事を見る。紅葉は相変わらず不機嫌そうに窓の外を眺めていた。その所為で誰も近寄ってはこない。既に友達グループも出来つつある中で、優姫紅葉は孤立しかけていた。
「これって……俺の所為じゃないよな?」
「紅葉ちゃんが不機嫌なのが伸二の所為だとして、紅葉ちゃんが孤立したら完全にお前の所為だな」
「まじかよ……」
そう言えば小学校の頃も紅葉は桜がいない時は一人で遊んでいた気がする。やはり、桜に告白するとか、そういうのも含めて早めに紅葉と和解しないといけない。
俺はもう一度席を立ち、紅葉の席へ向かった。
「紅葉……えっと」
「なんでなの?」
「は?」
紅葉の唐突な質問に戸惑う。取り敢えず何か答えておいた方がいいのだろうか……
「えっと、仲良くしたいから?」
勝手に紅葉の言葉を『なんで話し掛けてくるの?』だと解釈して答えてみる。だが、返答がない。というか、俺の顔すら見ていない。
もしかして独り言だったのだろうか。だとすれば無視されるよりダメージがでかい。俺はあえなく撃沈して自分の席に帰った。 水谷がまた肩を叩き慰めてくる。
「ドンマイ!諦めないことが勝利への近道だぜ!」
「お前楽しんでないか?」
「勿論楽しんでるけど?」
「悪びれないのが逆に清々しいよ……」
俺は力無く机に突っ伏して朝の時間を過ごすのだった。
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