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平凡な日常を変える為には恋愛しかない。
俺はそう思いながら受験勉強を頑張った。狙うは超難関と言われている春咲高等学校だ。
そこへ入れば大学でいい所に行けるだとか、就職に有利だとか、そんな事は正直どうでもいい。
春咲高校に行きたい本当の理由……それは別々の中学へ行ってしまった、片思いの相手と再会する為。
不純な動機だろうが、本当に合格してしまえば誰も文句は言わないだろう。俺は彼女の顔を思い出すだけで頑張れた。そして等々春咲高校に合格したのだ。
「久しぶりに会ったらなんて言って挨拶しようかな……」
不意に今朝の夢を思い出し顔がニヤける。力の抜けた顔を元に戻すため、頬を叩いた。
「よし!」
春咲高校の校門は夢で見たのと全く同じで桜が満開に咲いていた美しい学校だった。風に舞う桜が俺達新入生を歓迎しているようにすら見える。
これでほんとうにあの子が俺を待っていたら完璧なのに……そう考えて首を振る。
「それはないか……」
そんなに人生都合良くはできていない。そう結論を出してまた歩き出す。だが校門が近づくにつれ、俺は目を疑うことになる。
校門の前で一人の女の子が誰かを待つように立っていたのだ。
「え……?」
風に靡く茶色い髪。右側はリボンで結んでいる。幼い顔立ちで、瞳は足元を見ていてまだ俺には気づいていない。
「桜……?」
もしかして正夢?だが、そんな筈が……取り敢えず俺はその子の元へと走った。近付いてくる俺に気がつき、少女は優しく微笑んだ。
「……」
目の前に立つ。やはりどこからどう見ても、俺の知る女の子。俺が片思いし続けたあの子だ。
《優姫桜 ユウキサクラ》が俺の目の前にいる。
久しぶりに会って言葉がでない。成長した彼女は自分が予想していたよりも可愛くなっていた。
桜は優しく笑いながら口を開いた。
「久しぶりだね、伸二君!」
「あ、おう!ひ、久しぶり」
覚えていてくれた!それだけでもう死んでもいいくらいに嬉しい。
「また一緒の学校に通える。よろしくね!」
「よ、よろしく」
手を出して可愛く笑う桜。まさに天使そのものだ。本当に夢のような気がして、俺は思わず頬を抓る。しっかり痛い。夢ではないらしい。
俺は桜の手を握ろうと手を出した。手と手が触れ合う数センチ前、突然声が聞こえた。それはとてつもなく殺気のこもった声だ。
「ゴラァァァァア!!」
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