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「外から、丸見えだ」
ものすごく恥ずかしい。
照義のほうへ振り向こうと首を傾げた瞬間、さして抵抗もできなかった両手を取られ、指紋ひとつないガラス窓にへばりつく格好にさせられる。
俺の手首を照義の手が掴んで、身体はガラスに張り付きそうなギリギリ。
「やっ! 照義ってば、ベッドにっあっ!」
ガラス、汚しちゃう。
そう思って腰を引いた瞬間、尻たぶに当たるんじゃなくて、熱くて硬い照義のものが挟まった。ベルトを外して、前だけ寛げてる。
「こ、このままなんで、ダメ、だよ」
「どうして?」
こういうの痴態っていうんだ。
変態ともいう。裸でこんな大きな窓ガラスの前にへばりついてるなんて。
ものすごく恥ずかしくて、ガラス窓と照義の間に挟まっている格好にきゅっと唇を噛んで俯いた。
足元には久し振りに見る、すごく綺麗な桜。
満開で、少し風が強いのかもしれない。チラチラと桜色の風が吹いているように見える
あれは桜の花弁だ。
そして、夜桜は丁寧にライトアップされて、どこかピンクじゃなく、白に限りなく近い紫色にも見えた。
すごく、見惚れるほど綺麗な桜を足元にしながら、こんなやらしいことをしている自分に――
「興奮するでしょう?」
「! や、ダメ、触ったらっ」
「ここ濡らしてるくせに?」
「い、いじわるっ」
「貴方がいけなんですよ?」
え? って、驚いて、ガラスに押し付けられながらも、慌てて窮屈な身体を捻じ曲げて振り返った。
「貴方があの時のことを思い出させるから」
そこにはすごく切羽詰まった男の顔をした照義がいた。
男の色気が溢れすぎて、むせ返りそうなほどなのに、どうしてだろう、頭を胸に招いて抱き締めたくなるくらい子どもっぽくも見える。
「貴方と私の間にあった、見えないくせにやたらと分厚くて高い壁に毎日遮られていた頃を思い出させるから」
「……照義」
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