プロローグ

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 これは、俺が無音に聞かせた話しの一部。  俺の思考が混じっているけれど聞いて欲しい。  柴犬は、ムウと言う。  犬年齢でいうと成人になったばかりだ。因みに雌犬。  赤い首輪と茶色い毛、真っ黒な眼が特徴だ。その日は車椅子の主人と看護師に連れられて散歩に出た。  普段は病院内だけと決められていたが、看護師が居るとき、主人の体調が良いときは、外に出ることを許されている。  ムウはそれを知っていた。ムウは散歩が大好きで近くの公園はもっと好きだった。  空は快晴で風も心地好かった。ムウは少しはしゃいで公園を走り抜け、沈黙通に迷い込んだ。  沈黙通は薄暗い、明るい場所を探してムウは彷徨いていた。  だけど、ムウを襲ったのは更なる暗闇だったんだ。  ムウは持ち上げられて暴れたけれど、顔を覆った布は取れなかった。  それどころか怪しい不審者がムウの足に注射針を刺したんだ。  ムウは意識を失って不審者に連れ去られた。
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