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急いでたんだ。
早く皆に教えなきゃいけなくて。
教えたくて。
いつもより四倍速く階段を駆け下りていたのがいけなかった。
コンクリートの固さを感じるはずの足が、ツルッとした何かを踏みつける。
傾いた体を持ち前の反射神経で持ち直し、片足で一歩前の階段を踏んだ瞬間。
瞬間、俺はやらかした。
少しだけ、本当に少しだけ気を抜いてしまった。
両足が地面に着くまでは引き締めていなければいけなかったのに。
さっきと同じ感触。
ツルッとした何かを俺は踏みつけた。
傾く体。
気を抜いてしまった体は咄嗟のことに反応出来ず、俺はただ滑り落ちる。
頭部所か体全体に走る鋭い痛みと共に薄れゆく意識の中、俺は見た。
黄色。
ペタリとした黄色の物体がそこにはあった。
一つではなく、二つ。
罠かと勘ぐるくらい絶妙な配置に、猿の大好物が。
ふつふつと込み上げてくる怒り。
校則でバナナの持ち込みを禁止してやる。
猿どもも、め…
悲しいことに
俺、朝霧景都は、そこで意識を無くした。
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