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埃の塊やお菓子の食べカスらしきモノを踏まないように避けながら進むが、一つもそれらを踏まずに目的地まで辿り着く事はできなかった。
「…っぅお?!」
ぬるぬるした何かを踏みつける。
危うく転びそうになったが、持ち前の運動神経で何とか態勢を立て直す…ことは出来なかった。
「……ッ」
あっけなく体は床につき、俺は軽い目眩に襲われた。
何故だと疑問に思うより先に、ああ前にもこんな事があったようなと視線を向けると案の定そこには黄色い物体もといバナナ。
「…ふ、ふはははははは」
思わず笑いがこみ上げてきた。
今日はとことん厄日らしい。
これでもかって程バナナを踏みつけている。
1日にバナナを3回も踏みつける男がこの世界にどれだけいるだろうか。
少なくとも俺はそんな体験をした奴何て聞いたことがない。
もしかすると俺が史上初、まさかのGuinness Book登録だなんてあり得るんじゃないか?
馬鹿らしい事を考えながらふと手を見ると、ああ全く、何てことだ。
受け身を取るために使った手は埃と粉状のスナック菓子の油のせいでベトベトになっていた。
更に言わせてもらうとチリが目に入ったのか何なのかツキツキ両目が痛む。
鼻につく湿気臭い、ゴミ溜めの様な臭いも俺をさらに憂鬱にさせた。
一体何なのだろうかこの部屋は。
躾のなっていない我儘な子供が30人くらい暮らしているのだろうか。
助けてもらっておいて何だかよくもまあこんな汚い部屋に人を入れようと思ったな。
もしかしたらこの主は通常の精神を持っていないのかもしれない。
「…とにかく洗面所」
痛む両目を必死に見開き、なるべく臭いを気にしない様にしながら俺はゆっくりと進んでいった。
これでまたバナナの皮を踏むようなことがあったのなら、俺はもうあれだ、ブッツンする。
誰がどう言おうと何だろうと、この部屋は燃やして完全に灰へと変えてやる。
俺は固い決意を胸に、やっと辿り着いた洗面所だと思われる扉を開けた。
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