美形と日記。

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「…は、」 鏡に映る、ドアから顔を出す誰か。 本来なら俺を映す筈の鏡が、全く知らない男を見せる。 「なんだ、…」 光に反射してキラキラ光る金髪に赤い目。 目はカラコンか? 通りでさっきっから目が痛むはずだ。 俺はそっとカラコンを外した。 改めて鏡を見ると、モデルと紛う程整った顔がそこにはあった。 クッキリした二重に高い鼻、程よい厚さの唇。 意思の強そうな瞳はまるで吸い込まれそうな程に黒い。 「…ハーフ、ではないよな」 おそらくこの髪色は染めたもの。 地毛は瞳と同じで黒かな。 手で髪をすくう。 少し硬いが、思った通りサラサラだった。 染めてこのキューティクルレベル、女子の嫉妬をかいそうだ。 「カラコン何て、入れなければいいのに」 赤なんて…美形だからこそ選べる色だぞ。 羨ましい、何て、思わないけど。 鏡の中の美形と見つめ合う。 うん、 「……まじ何だコレ」 冷静に顔の解説したりしてたけどどういう事? 誰この人何で鏡に俺が映ってないの。 階段から落ちた衝撃で骨格が変わったとかレベルの話じゃない。 別人だ。 「何がどうなってるんだ…」 鏡を見て分かる本来の俺と違う顔に体格、着ていた制服さえ違う。 俺が着ていたのは白いワイシャツにゼウス色のブレザー、ドーン・ミスト色のスラックスだった。 やけに色彩に気合を入れたその制服は、歩けば誰もが二度見する。 ブレザーの胸元には、麻布高校の紋章が刺繍されていた。 それが今はどうだ。 シミひとつ許さない真っ白な学ラン。 胸元には繊細な金糸の刺繍が施され、紫の薔薇のバッジが付けられている。 「確かこの紋章は…御岳高校…」 そこそこ偏差値の高い金持ちが通う学校で有名な所だったかな。 通りでこんなド派手な制服な訳だ。 内心恥ずかしいが流石このハーフ顔。 しっかりと着こなせている。 「……」 取り敢えず、この部屋詮索してみるか。
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