第一章~外の世界~

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 えっ何で?どうして?  意識が次第にハッキリしだし、手足の感覚が戻っていく。一秒もないうちに全ての感覚が戻った。  周りは憑依する前と同じ場所、物の場所も同じ、ただ違うのは……。申し訳なさそうにうつむいている着物を着た、半分透けている美しい人が見えること。  知らない人だけど一目でわかった。 「リーリエだよね?」  静かにその女性は頷いた。 「ねぇ何で?何で死んでいるの? 治癒魔法を使えば助かるんじゃないの? ねぇ何で黙ってるの?」  泣くボクにリーリエは黙って俯いているだけ……。 「そっか、やっぱりリーリエもボクを見捨てるんだ」 『そうではない。そうではないのだ。ただ、お主に申し訳がたたんのじゃ。  あれだけ言っといて、また失敗した妾が情けなく、腹ただしいんじゃ』  そう言ってボクを見たリーリエの顔には苛立ちが見える。  手は固く握られていて。生きていたら血が出ているのではないのかと思うほどだった。
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