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なのに……なのに……。
俯いたボクの目に涙が浮かび、握りしめた手が痛くなってきた。
口で説明すればいいものを、魔術なんて危ないものをわざわざ使ったお母さんに苛立ちを覚えた。
「まぁそう気にするな。あれは寿命を代償にしたものじゃから、そもそも寿命の尽きた妾にとっては使いたい放題の魔術なんじゃよ」
人の気も知らないでひょうひょうとするお母さんに我慢の限界をこえた。
お母さんを再び持ち上げ、涙も拭わずお母さんの目を睨んだ。
「何が寿命を代償にした魔術だからだよ。
そもそも魔術は失敗すると術者が死んじゃうものでしょ? 人の気も知らないで何が気にするな、だよ。
ボクが今どれだけ不安に思ったと思ってるの?」
耐えきれずにお母さんを抱えた。
お母さんの毛にボクの涙が一粒、二粒と落ちて濡らしている。そんなお母さんの体は冷たく、生きていないことを実感させられた。
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