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プロローグ~捨てられる前~
嵐の夜、一つの屋敷で豪華なマントを羽織った男がドアの前を行ったり来たりと忙しなく歩いている。
そんな男性を執事やメイドは見かねて落ち着くように進言するが同じ返答を繰り返すばかり。
またしても……。
「ご主人様。もう少し主としての振る舞いを」
「それはわかっている! しかし、初めての我が子が産まれるというときに落ち着いていられるか!」
そうこうしていると屋敷中に元気な産声が響いた。
落ち着きがなかった男はドアを勢いよく開け放って声のする方へと走っていく。
ドアの先には汗まみれの女腕の傍らに赤ん坊がいた。
「よく頑張ってくれた」
男は微笑みながら最愛の女に近づき安堵した声で話しかけた。
女の方も微笑みながら「疲れたわ」と答える。
「ところであなた。この子の名前考えたの?」
女は男にまだ決まっていない我が子の名前を聞いた。
「リリィはどうだ?
リリィは花の名前で遠い西の国に生えている白く優雅で高貴な花なんだそうだ」
「そうですね。良い名前だと思います。でも、この子は男の子ですよ?」
「リリィの名前にふさわしい優雅な子供になるように育てよう」
「それは名案ですね」
そう言いながら二人の顔は近づきキスをした。
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