クリスマスはサプライズで

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 自分の事を信頼して無防備な陽子。 それは、今も同じ。 本当は直ぐにでも陽子を抱きたかった。 抱き締めたかった。 でも翼は又躊躇していた。 未だに中途半端な自分がねたましく感じて…… 結局翼はキス以外何も出来なかった。 それでいいと思った。 クリスマスイブに陽子が傍に居る。 それだけでも嬉しい。 翼は身も心も舞い上がっていた。  二人の仲睦まじさは、忍と純子夫婦から伝え聞いていた。 でも、どうしてもこの目で見たかったのだ。 確かめたかったのだ。 余命幾ばくも無いことを知っていた勝。 せめてクリスマスイブだけは…… 案じていた翼と、その恋人の陽子と一緒に過ごしたかったのだ。 節子と貞夫夫婦には、陽子と一緒に許可は貰った。 でも…… クリスマスは本来家族で過ごすためのものだ。 だから海外では十二月二十四日から、二十六日にクリスマス休暇が与えられる訳なのだ。 節子に寂しい思いをさせることになる。 でも敢えて、承知してもらったのだった。  最後のクリスマスになることはおおよそ解っていた。 だからこそ一言も漏らさないようにと翼は聞き耳を立てるのだ。 『春まで持つかどうか』 主治医は言う。 それでも、長生きしてほしいと翼は思っていた。 でも確実に死期が近付いていることだけは曲げようのない事実だったのだ。 だから尚更一言一句を聞き逃したくなかったのだった。
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