出逢い

4/13
前へ
/176ページ
次へ
 丁字路を明智寺方面に曲がる。 静かな細い緩やかな坂道に足が向く。 電車の音がする。 振り向く陽子。 西武秩父駅へ向かう下りの電車がスピードを緩めて横瀬駅に入って行く。 その先に目を移すと、武甲山がドンと構えている。 (それにしても大分崩れたな) 陽子は秩父の象徴的な山を痛々しげに見ていた。  陽子はやっと歩き出した。 (お姉さん又びっくりするかな?) それが気掛かり。 陽子が何の連絡もしないで訪ねて行くと、何時も驚く純子。 『お母さんに何かあったの?』 と決まって聞く。 解っていながら又やってしまった陽子。 幾分俯き加減になる。 そんな陽子に道沿いの花が少し勇気をくれる。 (ま、遣ってしまったから仕方ない。なるようになるか……) ようやく幾分かは開き直った。 陽子が横瀬に足繁く通いつめるには理由があった。 それは仲の良い姉夫婦を観察することだった。 それはそれは羨ましくなるほどのラブラブカップルだったのだ。  夏の花と秋の花が混在している道端。 それらに気を取られながら歩いいて行くと、目の前に広がるセメント工場。 下りきった所に白いガードレールの橋がある。小さな川がその下をを流れている。 その橋を渡ると、下り坂が一転する。 暫く続く上り坂。 上りきった所には丁字路。 目の前の矢印看板には札所九番と武甲山。 そしてさっき降りた横瀬駅の名前。 陽子の姉の嫁ぎ先は、その少し手前にあった。 「あれっ何だろう?」 陽子は看板の上に気になる物を発見して近付いた。 「カワセミ? ……だよね? これ。やだ、何で今まで気づかなかったんだろ? 横瀬にいるの?」 陽子は暫くそれを見とれていたが、首を傾げながら姉の嫁ぎ先の堀内家に足を向けた。 陽子は懐かしそうに、ドアを開けた。 image=498880608.jpg
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加