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みどりさんはもう、大粒の涙をポロポロこぼしながら、声を押し殺して泣いていた。
僕は、みどりさんの頭をソッと抱き締めて、ただひたすら、優しく頭を撫でて(なでて)いた。
掛ける言葉が見つからない…。
僕が付き合っていた頃のみどりさんは、決して涙を見せなかった。それだけ、みどりさんは前を向き、光輝く存在だった。
みどりさんの涙を初めて見た僕は、うろたえ、困惑し、そして、守ってあげたいと、心の底から思った!
暫く(しばらく)泣き続けたみどりさんは、やがて僕の手をソッと離しながら、
「有難う、隆之。彼女に悪い事をしちゃったね」と、涙に濡れた声で謝ってきた。
「僕は大丈夫。みどりさんこそ、大丈夫?」
「うん。でも、ちょっと疲れた。来てくれたのに悪いんだけど、1人にしてくれるかな?」
「判ったよ。でも、何かあったら、すぐに連絡してね」
「うん。本当に、有難う」
みどりさんは、強張った(こわばった)笑みを浮かべながら、僕にソッと手を振った。
僕も、軽く手を振りながら病室を後にした。
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