心のFilm

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「とっても優しくて…愛おしい顔。」 俺はもう、堪えることなどできなかった。 こみ上げてくる熱くて痛いものも溢れて止まらず、それは涙となって零れ落ちた。 「…ちょっと、達矢、泣かないで。僕の最後のキスなのに。」 「…ッ、最後とか、言うな…ッ…手術まだだろッ…諦めんな、バカ…」 「…うん。ありがとう。その泣き顔も、あったかい涙も…刻んどいたよ、心に。」 俺は智耶を抱きしめると、そのまま口を塞いだ。 智耶の目にもあたたかく光るものがあった。 *************** 次の日。 嫌なほどに快晴だった。 俺はスタートラインに立つ。 今頃智耶の手術も始まっているだろう。 …大丈夫だ、智耶。あんなの最後のキスじゃねぇ、最初のキスにしてやる。お前の知らないいろんな表情を、これからも見せてやるから。 クラウチングスタートの姿勢をとり、俺は自分の世界に入った。 …神様。 俺、今までの大会で1回も神頼みなんかせずに走ってきた。けれど、今日だけは、神頼みさせてください。 もし…もし、俺が優勝して1位でインハイに行けたら、智耶の右眼を救ってやってください。 …どうか…どうか。手術が成功しますように。 ピストルの音と同時に、俺は地面を力強く蹴った。 Fin.
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