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「実はね、小テスト作ってきたんだよ。」
「えーやーだー。」
「やだじゃないでしょ、テスト期間突入しちゃうんだから。」
テストって何歳になっても嫌なものですよね、そうですよね。
「先生、まだ昨日のこと怒ってんですか?」
「大人は忘れる生き物ですよ。」
「子供は根に持つタイプですよ。」
どっちが大人でどっちが子供なんだか。
「先生って私が成績良くなったら、お願い事とか聞いてくれるんだよね?」
「誰が言いましたか、そんな理不尽なこと。」
「ケチ。」
「切り詰めてるの、学生だからね。」
「一応お客さんなんですけど、私。」
「そうですね雇い主様、何なりとご命令を。」
「棒読みなんですけど。」
「小テストご準備いたしましたので、お席に付いていただけますか?」
「わかりました。てか、先生なんか楽しそう。」
こういう冗談を言い合える関係になれることは、
もしかしたらとても幸せなことなのかもしれない。
まったく目を合わせてくれない生徒や、
表向き態度良くても次から結構ですと言われて契約解除されたという話もつい最近聞いた。
ビギナーズラックというか、最初だから基準がそこだから次は何とも言えないが、
俺はこの出会いを、自分の人生の中での少しのスパイスとして楽しもうと考え、
少し難しめに作った小てすとを彼女の目の前に広げて見せた。
「おかえり、りょうさん。」
隆は少し目線をこちらに向けて、すぐにパソコンの画面に目を向けた。
提出日が近いのか、部屋が若干散らかっているのが気になった。
「ただいま。隆さ、おなかすいてる?」
「ん?ちょっと食べてきちゃったけど、何か買ってきたの?」
「プリンと、モンブラン。」
「どしたの?買ってきたの?嬉しい。」
「いや、バイト先で貰ったんだけど、モンブランは食べかけだけど、いる?」
「食べかけがいいの。りょうさんはプリン食べる?」
「明日な、今日はいいや。モンブランは今日食べたほうが良さそうだから。」
「わかった。これ終わったら食べるね。」
隆はレポートで埋め尽くされたテーブルの上を片付けながら答えた。
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