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「まだ、終わんねえの?」
俺はテーブルからこぼれた一枚の紙を見て、少しだけ違和感を感じた。
「これさ、お前のレポート?なんかいつもと分野違うんだな。」
隆は片付けるのが苦手なところがあり、大人びた顔のわりにそんな一面があるんだと、
住み始めた当初はその発見に嬉しく思ってた。
そして片付ける度に嬉しそうに笑う隆を見て、いつの間にか片付けるのが習慣になっていた。
そのせいもあってか、よく読んでいる資料や参考書にはたまに目をとおしていたものだ。
恋人が今、何を考え何を思い、それを何かしらの手段を使って知りたくなる日、
そんな日がくるなんて、思わなかったのにな。
「これはね、ちょっとお手伝いなの。」
「同じ学部のやつ?すごいな、お前頼られてるんだな。」
「う、うん。まあね。」
隆は、困った時と、何か隠し事がある時に、「まあね。」という言葉をよく使う。
いつもは少し褒めただけでも、「そんなことないよ。」と照れながら顔を赤らめるものでして。
「まあね。」と言っている時は、もう別の事を考えていて、話をそらす準備をしているのだ。
「そういえば、なんでモンブラン食べかけってことは少しは食べたってことだよね?
あんなに嫌いなのに食べたんだね、りょうさん偉いですね。よしよししてあげます。」
これは、完全に、ビンゴだ。
誰のお手伝いを、お前はしてるんだよ。
その隠したい相手は、誰なんだよ。
「よしよしなんていらないからさ。お前の嫌いなプリン、別の食べ方したいんだけど、いい?」
「いいよ。でも、俺はプリン食べれないからね。」
「お前は食べないんだよ、俺が食べるから。」
少し片付いたテーブルから隆を引っ張り出して、俺は整頓されたベットに向かった。
モンブランとプリンの入った箱が歪んでいたが、俺にはそんなことどうでもよかった。
to be continued...
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