第5章

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「はい。」 「……あれから小松に絡まれてない?」 山本さん…心配してくれてたんだ…… 私は笑顔を向ける。 「あの時はありがとうございました。どうしたらいいかわからなくて。」 「誰にも相談してないのか?」 「えっ?…ええ。食事に誘われただけですし…山本さんも、言わないでくれてありがとうございます。」 「俺はみんなに言った方がいいと思うけど。」 「あれから会ってないし、確か小松さんは暫く北陸ですから……大丈夫です。」 会社のホワイトボードに社員の予定を書き込む事が、私の仕事のひとつ。 だから小松さんの予定も知っている。 「でも、またアイツが何かしたら…社長に報告するからね。」 私はにこっと笑うしかなかった。 「瑞穂!」 健太郎さんが走って来た。 山本さんは私の肩をポンポンと叩いて先に行ってしまった。 「早いな。」 「だってトイレに行きたいんですもん。」 健太郎さんが笑う。 「オレも!」 「健太郎さん、疲れた?」 「うんにゃ!瑞穂がオモシロバナシして くれたから大丈夫。」 「私の失敗談なら、まだまだありますよ……私って、ドジなのかな?」 「間違いない。でもかわいいよ。」 そう言って私の頭をワシワシと撫でた。 トイレを済ませて奥さんと一緒に出ていくと、コーヒーの自販機の前に男性陣が集まっていた。 健太郎さんは直樹さんとルートの打ち合わせをしている。 隆也さんが私に缶を差し出した。 「……飲む?」 「ココア?はい!!ありがとうございます!!」 私は両手で受け取った。 隆也さんの指が触れた。それだけでちょっとドキッとする。 隆也さんはもう、健太郎さんと直樹さんの会話に加わっていた。 私は缶を両手で包み、頬に当てた。 あったかくて、幸せな気分… まどかさんとジェシカも来て、出発だ。 「瑞穂!置いてくぞ!」 ボーっとしていて、みんなに遅れた。 健太郎さんの声に慌てて後を追う。 隆也さんがチラッと私を見た。 ……ドンくさい…… そう言ってる眼差し……私は顔が赤くなった。 …私のドジ!!
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