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「きゃぁ!!」
……また転んだ。
賑わうゲレンデの隅で、私は社長と奥さんからレッスンを受けていた。
何でもない斜面が、絶壁に見える。
滑る、という行為がこんなにも怖いなんて…
「瑞穂ちゃん、内股よ。かかとを開いて。」
奥さんが手本を見せてくれる。
「はい!!もう1回やります!!」
私は自分を奮い立たせて、蟹歩きで斜面を上がる。
みんなが声を掛けて通り過ぎていく。
私もみんなみたいに颯爽と滑りたい!
…でも…
現実は厳しい。
腰が引けて、転ぶ。
大きな影が私の横で、シャッと音を立てて止まった。
見上げると……
「隆也さん……」
「………」
隆也さんは無表情で私をじっと見下ろしている。
「あら、隆也くん。瑞穂ちゃん頑張ってるわよ。」
「みたいですね……社長、奥さんと滑ってくれば?彼女は俺が見てますから。」
「あ!私なら一人で大丈夫ですから!!」
「……どこに行くか制御も出来ないくせに。誰かにぶつかったらどうするんだ…意地っ張り。」
隆也さんが冷たく言い放つ。私は口を尖らせた。
「あら!!ホント!?じゃあお願い!!瑞穂ちゃん、ちょっと行ってきていい?久しぶりにどんな感じか試してみたいの。」
「どうぞどうぞ!!せっかく来たんですから存分に滑って来て下さい!!私、迷惑掛けちゃって…」
「やあね瑞穂ちゃんたら!!そんな事言わないの!!誰でも最初はそうなんだから!!……隆也くんと練習しててね。」
「はい。行ってらっしゃい。」
社長と奥さんが微笑みあいながらリフトに向かって滑って行く。
はあ~、いいなぁ…私もあんな夫婦になりたいな………誰と?……うぅ…まずは相手を探さないと……
「…い……おい!!…」
「えっ?」
「何ボケッとしてる!?サッサと練習!!」
「隆也さんコワイ…」
「意地ばっかり張るくせに。」
「……イジワル…」
「滑ってみろ。」
私はソロソロと滑り出し…転ぶ。
隆也さんはサッと私の横に立った。
……立ち上がるのに手は貸してくれないけど…
「怖がるな。足の裏の内側で踏ん張るんだよ。」
「……はい。」
本当はもう、スキーなんてイヤだったけど、このまま帰る訳にはいかない。
私は唇を噛んで、蟹歩きで斜面を上る。
負けない!!寂しくても、辛くても、自分で選んで来たのだから!!
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