第5章

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「上るときにエッジを立てるだろ?それと同じだ。よくイメージして……危ない時には俺が止めてやる。だから根性出せ。」 「……ホントに?」 「俺がついてる。信じろ!!」 オレガツイテル…シンジロ!! 信じよう、嘘の無いこの人の瞳を。 私は思い切った。そして…… 「できた!!」 「当然だ。次は曲がる練習!!」 「うぅ……オニ!ドS!」 「何とでも言え。ほら、上れ。」 私はヒーヒー言いながら斜面を上った。 「ちょっ…ちょっと休ませて…」 「さっきの感触を忘れないうちにやるんだ。今度は踏ん張る足の力を交互にする。わかるか?」 「……はい。」 「よし。やって。」 ん?曲がった!!…反対も…できた!! 私は下まで滑って、止まった。 「できた!!隆也さん!できたよ!!」 隆也さんはすかさず私の横に立ち、満足そうに微笑んだ。 ……優しい笑顔…嬉しい…… 「隆也さん、ありがとう。」 「礼なら辛抱強く教えてくれた奥さんに言え。ほら、忘れないうちにもう1回。」 「はいっ!!」 私は急に元気になって、上る、滑るを繰り返す。隆也さんも必ず側に立ってくれた。 「さてと、次はリフトだな。」 「えぇー!!まだあるの!?」 「何言ってる。上から滑って来なきゃ面白くないだろうが。」 「うぇ~ん、コワイ~!!」 「甘ったれ!!得意の意地っ張りはどうした?ゆっくり滑れば絶対できる。」 「……隆也さん、側にいてくれる?」 「うん。」 「わかった。挑戦してみる!!」 隆也さんの後ろについてリフト乗り場に行く。 彼の真似をして、彼と一緒にリフトに乗る。 「はぁ、ドキドキした!!」 彼がフフンと笑う。 晴れ渡った空。風に舞い上がる雪の欠片がキラキラと輝く。 「隆也さんて、何でもじょうずね。」 「あ?何が?」 「この前の野球とか。」 「ああ。負けず嫌いで凝り性だから。」 「自分に厳しいんですね。」 「でもないよ。ただ、実感したいだけ。」 「何を?」 「生きてるっていう…」 「……深いですね。」 「ははっ。ネクラなんだよ。」 …そう言ってそっぽを向いた隆也さん。 何か重いモノを背負っているのかもしれない。 私はなるべくバカっぽく、冗談っぽく言った。 「隆也さんてステキです!!」 彼は横目に私を見て、鼻で笑った。
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