第5章

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「できる。私、やります。」 隆也さんが微笑んだ。最高の笑顔をくれた。 「よし。偉いぞ。じゃあ頑張ろう。」 「はいっ!!」 私は勇気が湧いてきて、残りの斜面を順調に下りて行った。 「よく頑張ったな。」 ようやく平な所に到着して、隆也さんが笑顔を向けてくれた。 「はい!!ホントにありがとう隆也さん。」 「ん。良かった。」 近くでさっきの若者たちがはしゃいでいた。 隆也さんは舌打ちをすると、私に向き直る。 「お前はここにいろ。」 「えっ?隆也さん!!」 隆也さんは彼らに近づいて行った。 「お前ら、どういうつもりだ?怪我人が出たらどうするんだ!?」 「……あぁ!?文句あんのかよ!!」 「初心者が邪魔くせぇんだよ!!」 「そうそう!!チンタラしやがって!!」 隆也さんの周りの空気が……変わった…? 「テメェらだって最初はあんなモンだったろうが。」 「はっ!!まさかぁ!!オレら天才よ!!最初からスイスイだぜ!!」 「なんなら勝負するかアンちゃん!?」 「……いいぜ…」 「隆也さん!!ダメだよ!!危ないよ!!」 私が叫ぶと、隆也さんはチラリと私を振り返って、ニヤッと笑った。 若者が、本物の絶壁を指差す。 「そこの超上級者コースでな。」 「わかった。」 隆也さんが戻って来た。 私はオロオロして、彼の袖を握る。 「行っちゃ駄目!!あんな人たち、放っておいて!!」 隆也さんは笑って私の頭を撫でた。 「すぐ帰ってくるから、ここを動くなよ。あ、突っ込んで来るやつに気を付けるんだぞ。」 「…隆也さん!!」 彼は若者たちの代表とリフト乗り場に行ってしまった。 「アイツに土下座させようぜ!!」 「板で踏みつけるってのどう?」 残った二人が大声で笑う。私は泣きそうな気持ちをこらえて、彼らを睨みつけた。 そこに健太郎さんが現れた。私はホッとして、涙をこぼす。 「はあー!!やっと見つけた!!……あれっ!!瑞穂?泣いてるの!?どうしたんだ?……社長と奥さんに隆也と一緒だって聞いたけど…隆也は?」 「健太郎さん!!隆也さんが!隆也さんが!!」 私はいきさつを手短に話した。 健太郎さんは険しい顔で聞いていたけれど…… 「心配いらないよ瑞穂。安心して、しっかり見ておきな。」 いつもの爽やかな笑顔で私の板を外すと、健太郎さんは私の肩をコースに向けた。 そう言われてもすぐには納得出来ない 。
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