第1章

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私は17歳になった頃、 隣の大国の王家に嫁いだ。 そこの王様であり、私の夫であるのが アルス・クレイソン 私が嫁いだとき彼は25歳だったかな。 若くしてクレイソン家を継いだ 才能あるお方だった。 また、見た目も麗しい方だった。 透きとおるようなブロンドヘアーに 目尻がキュッと上がったレッドアイ、 鼻筋がすっと通り、極めつけはエロい涙ぼくろだ。 身長は180を超えるスラリとした体型だ。 そんなどんな女でも落ちるような 美貌の持ち主に私が落ちないワケがなかった。 今思えば彼はただ、言い伝えの恩恵が欲しかっただけだったのかもしれない。 でも、 「我が愛しの妻よ。ようこそ我が国へ」 そう出迎えられた私は、愛されている、 愛し合っていると信じて疑わなかった。 まあ、世間知らずだったしね。 でも、幸せだったんだ。 豊かな国で、大事にされて、何も知らないまま数年間は幸せだと思ってた。 毎日、王様に愛していることを伝え 王様のお側にいる立場として恥ずかしくないよう努力もしていた。 「王様、わたくしはあなたを愛しています。これからもずっと。」 「ああ。ありがとう。」 そう返していただいて、私はずっと思い違いをしていた。 ああ。私は王様に愛されている。 と。 王様が私を愛してると仰られたことなんて一度もなかったのに。 だから私は思いもしなかった。 王様が私ではない、他の誰かを愛していたなんて。 王様が私を愛していなかったなんて。
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