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「どうしたの?晴樹。そんな暗い顔して。幽霊でも見たの?」  妙で不躾な質問をする、幼稚園からの幼なじみ【三瀬優理花】(みつせゆりか)。そんな優理花へ、僕はぶっきらぼうに答えた。 「なんでもないよ。それより、優理花も皆とカラオケ行くんじゃないのか?早く行かないと置いてかれるぞ?」  僕は鞄に教科書を雑に詰めながら言った。と、優理花はにっこりと笑って 「あたしは行かないよ。だって、どうせ晴樹も行かないんでしょ?」  優理花は昔からそうだった。小柄で見た目も可愛い部類に入り、人懐っこい性格で男にも女にも人気があり、何より優しい。  だからこそ、そんな優理花の優しさも、今の僕には辛かった。 「僕が行かないからって、優理花まで行かない理由は無いだろ。放っておいてくれ」  我ながら冷たい態度をとってしまった、と罪悪感はあった。だが、僕にはそうすることしかできなかった。 「何よ、いいじゃない。アタシの勝手でしょ。晴樹、今日はバイト休みなんでしょ?一緒に帰ろうよ」  僕の冷たい言葉に一歩も怯むことなく、屈託の無い笑顔で語り掛けて来た。  僕は嬉しい反面、本当に放っておいてほしいという気持ちが入り乱れていた。
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